どうも。しゅんすけです。
今回は「伝える」という行為についてです。ぼくは、昨年度末まで青少年教育の世界で働いていました。まあ、今だって関わり方は変わりましたが、同じようなことをしているかもしれません。さて、その世界では「伝える」という行為がとても大事だったりします。でも簡単ではないんですよね。これが。「伝えたいことは何か」「伝える内容は整理できているか」「伝え方は適切か」などなど、他人に何かを伝えるって結構難しいんですよ。
でも、実はそういったテクニカルなことよりも、もっと大切なことがあります。今回はそんなお話です。
引きこもりを10年続けた男性を、家から出したのはあの人の一言―――。
彼の名前は「S」。35歳独身の男性だ。
今は東京都にある実家で暮らしていて、実は10年ほど前から「ひきこもり」となった。
22歳で大学を卒業し、地元にある「普通」。いわゆる普通と言われる企業に就職し、一生懸命働いてきた。仕事はそれなりに楽しかったが、残業するのは当たり前になっていて、休日に出勤することも度々あった。
食事はほとんど外食か、コンビニで済ませることが多く、家に炊飯器すらなかったのは、今思えばよく生き延びたなという感覚である。
そんな「S」に異変が起こったのは25歳の時。日頃の不摂生や睡眠不足がたたって、体を壊してしまったのだ。そこに普段から悩んでいた職場の人間関係についても問題化し、遂には仕事に行くことができなくなった。
実家に戻り、体と心を休めつつ、仕事に復帰するためのカウンセリングを10年間受け続けた。しかし、なかなか仕事に行くことはできなかった。
そんな生活が10年続いたあと、あるカウンセラーからこんなことを言われた。
「誰に応援して欲しいですか?」
「S」は考えた。今まで色んな人が応援してくれた。家族や同僚、友達やカウンセラーの方々。でも、なかなか前に進むことができなかった自分。そんな中ある人物が頭に浮かんだ。
「AKB48の大島優子です」
当時大人気だったアイドルグループのメンバーだ。
カウンセラーは無言で頷いた。
次の日、カウンセラーは大島優子のポスターを持ってきて、手書きの吹き出しをつけた。
「働くってカッコいい!」
そう。10年引きこもった男性を家から出したのは「AKB48」だったのだ。
いつ・何が・どこで・どうやって・誰の・どこに響くかはわからない
さて、このストーリーは、以前参加したセミナーで聞いた実話です。(名前や住所なんかは適当です)
この話はぼくにとって「伝える」ということを考える上でベースとなっています。
きっと、カウンセラーは、専門的な知識をたくさん持っていたでしょうし、家族や友人は「S」のことを想って、優しい言葉や励ましの言葉をたくさんかけてくれたでしょう。
でも、最後の決め手となったのは「アイドルのポスター」でした。
そんなことから「いつ・何が・どこで・どうやって・誰の・どこに響くかはわからない」というのがぼくの持論です。
これは何も教育的なことに限ったことではなくて、日常的なコミュニケーションで何か伝える時もそうですし、子育て中の子どもへの声掛けもそうです。
伝えるってことを真剣に考えている人ほど、伝わらなかった時に原因を自分に求めがちです。「伝え方が悪かった?」「内容がわかりにくかったかな」などです。
でも、実際にはそういったテクニカルなことではなくて、タイミングや人(誰が伝えるかなど)に起因している場合も多いんですよね。
このことを頭に入れておかないと、結構辛いです。伝わらないことで自分を責めてしまうし、正解のない正解を探すようなものなので。
はい。ということで少しまとめると、伝える技術は大切だけど、実際に伝わるかどうかはわからないし、そのことで自分を責める必要もないよーということでした。
なので、何かを伝えたいと思っているのなら、「伝わるかな?」と考える前に、「伝えちゃう」ことが大事かもですね。
あなたの想いは伝わっている?
では、あなたの想いは周りの人に伝わっているでしょうか。
これは、正直わかならいですよね。笑
ぼく自身を例に出すと、3歳の娘とのやりとりがまさにこれです。
ごはんを食べる時に肘をついちゃう癖がある我が家の娘。
行儀も悪いし、よく食べこぼすので「肘ついてるよー」と注意するのですが、少し経ったらまた肘をついている―――。
こんな時、「何度言ったらわかるんだ!」って怒鳴りたくなる気持ちもわかりますが、そこは「伝わる」という考え方に立ち戻って「今は響かないけど、いつか響く瞬間が来るんだろうなー」とどっしり構えることにしています。
実際トイレについてもそうでした。
うちの娘は少し前にオムツが外れて、パンツで暮らしていますが、オムツを使っていた頃から「トイレ行きたくなったら教えて」と何度も伝えていました。
でも、なかなかできなくて「本格的にトイレトレーニングした方がいいのかなー」とぼんやり考えていた時期に「トイレ行く!」と言い始めて、そこからパンツへの移行は一瞬でした。
まあ、そんな風に「伝えなきゃ!」っていう想いが強すぎるとお互いに辛くなりますし、楽しく暮らすことができないので、ぼくは「伝わるときは伝わるし、伝わらない時もある。もし伝わらなくても、何がきっかけで響くかはわからない」くらいの気持ちで構えています。
では、今日は「伝える」という行為について「伝えて」みました。
読んでくださった人にも何かが「伝わって」いれば幸いです。
(しゅんすけ)